一目均衡表とは?基本から具体的手法までわかりやすく解説!
1.一目均衡表とは
一目均衡表は需給関係の分析に長けていて、5本の補助線と価格の位置関係を見てトレンドと転換点(変化日)を予測するテクニカル指標です。
3つの基本理論
一目均衡表の基本理論は、「時間論」、「波動論」、「水準論」の3つの分野に派生しています。「波動論」と「水準論」で値幅目途を、「時間論」で相場が変化しやすい期間を予測しています。
この基本理論をもとに導かれた一目均衡表の5つの基本補助線は、時間観測に優れ、価格変動を捉えやすくしています。
各理論の詳細は、本記事の最後にて紹介しています。
3つの基本理論詳細
5つの基本補助線
一目均衡表は、5つの線で構成されています。まずは、チャートで一目均衡表を表示した時に、どの線が対応しているのかを見分けることから始めてくださいね。
5つの基本補助線とその計算式
- ①転換線:(過去9期間の高値+安値)÷2
- ②基準線:(過去26期間の高値+安値)÷2
- ③先行スパン1:(転換線+基準線)÷2を26期間分だけ右にずらしたもの
- ④先行スパン2:(過去52期間の高値+安値)÷2を26期間分だけ右にずらしたもの
- ⑤遅行スパン:最新のローソク足の終値を26期間分だけ過去にずらしたもの
一目均衡表の基本数値は「9、26、52」となっております。最初のうちは基本数値のまま使うのが良いでしょう。一目均衡表での分析は日足ベースが想定されていますが、FXでは大局的な相場の動きを読むために1時間足や4時間足、波動の確認に15分または30分足、5分足はデイトレード用でも利用できます。
波動について詳しく
5つの基本補助線の見分け方
【遅行スパン】
ローソク足と平行に動き、線の終わりが現在から26本分だけ過去(左側)にあります。
【先行スパン1と先行スパン2】
「雲」と呼ばれる部分をみると2本の先行スパンをすぐに見つけることができます。雲(抵抗帯)とは、先行スパン1と先行スパン2の間のことです。
また、先行スパン2は、52本期間中の高値と安値が計算式に含まれるので先行スパン1よりも緩やかで横を這うような動きをする特徴があります。
【基準線と転換線】
基準線は、その名の通り一目均衡表の基準となっている線で、相場の方向性を示しています。
転換線は、相場の切り返しの際に基準線より早く動きます。そのため転換線が、基準線を追い越していくという特徴があります。
5本の線を見分けられるようになったら、今度は基本的な順番を見ていきます。
上昇トレンドでの5本線の位置
上昇トレンドでは上から順に遅行スパン→ローソク足→転換線→基準線となります。
下降トレンドでの5本線の位置
下降トレンドでは上から順に基準線→転換線→ローソク足→遅行スパンとなります。
基本の順序を押さえてトレンドをしっかり把握していきましょう。
2.一目均衡表の見方
トレンド毎の特徴を押さえたところで、一目均衡表の売買シグナルをみていきましょう。
三役好転と三役逆転
三役好転
- 【買いシグナル】
- ①転換線が基準線を下から上にクロスする
- ②ローソク足の実体が雲を上抜ける
- ③遅行スパンがローソク足の実体を上抜ける
①~③がすべて揃った時を「三役好転」といいます。
三役逆転
- 【売りシグナル】
- ①転換線が基準線を上から下にクロスする
- ②ローソク足の実体が雲を下抜ける
- ③遅行スパンがローソク足の実体を下抜ける
①~③がすべて揃った時を「三役逆転」といいます。
基準線と転換線の交差
- 上昇トレンドの場合
上昇トレンドの場合、転換線がまず上向きになりそのあと基準線も上向きになっていきます。トレンド発生時に、転換線が基準線の下から上へクロスすることを「好転」といいます。
- 横ばいの場合
基準線と転換線がクロスが多くなったり、ラインが重なっている部分が多くなります。
- 下降トレンドの場合
基準線と転換線がクロスが多くなったり、ラインが重な下降トレンドでは、転換線が下向きになりその後に基準線も下方向になります。トレンド発生時に、転換線が基準線の上から下へクロスすることを「逆転」といいます。
先行スパン1と2(雲)の利用の交差
先行スパン1と2の間隔は抵抗帯として考えられており、雲と呼ばれています。雲の上をローソク足が推移しているときは上昇トレンド。雲の下をローソク足が推移しているときは下降トレンドと捉えることができます。
雲は、上昇トレンドではサポートされる価格帯として、下降トレンドではレジスタンスの価格帯として機能する場合があります。
先行スパン1と2がクロスした部分を「雲のねじれ」と言い、目先のトレンド転換を示すことがあるので一緒に覚えておきましょう。
また、基本形は、上昇トレンドの時に先行スパン1が雲の上限に、下降トレンドの時は先行スパン2が雲の上限になります。先行スパン1と2が逆になっている雲の時は、トレンドが定まっていないことも多いので位置関係を見間違わないように注意が必要です。
遅行スパンの利用
遅行スパンは26期間前と現在値を比較できる線です。26期間前の売買と比べることで、買い方が優勢かそれとも売り方かという状況を把握できます。
26期間前と比べて現在の売り方が含み損になっている場合は、「相場は買い優勢」となり上げ相場の傾向が強くなります。つまり、遅行スパンがローソク足を上抜けた時に「遅行スパンの好転」と言って上昇トレンドの発生時とみなすことができます。
逆に、遅行スパンがローソク足を下抜けた時に「遅行スパンの逆転」と言って下降トレンドの発生として見ることができます。
3.どのような状況で使うか
①基準線が節目になっているかどうか
基準線は、上昇トレンドなら押し目のサポートラインになっているかどうか、もしくは下降トレンドなら戻り目のレジスタンスラインになっているかどうかに着目します。
②転換線と価格の位置関係を捉える
ローソク足と転換線の位置関係はトレンドの強弱を把握するのにも役立ちます。
強いトレンドの時:
転換線の傾きは大きくなり、ローソク足はトレンドの方向性と合うように強く動く。つまり、強い上昇トレンドならローソク足は転換線の上側を推移し、強い下降トレンドではローソク足は転換線の下を推移する。
弱いトレンドの時:
ローソク足が転換線と交差することも多い、また転換線の傾きは小さい。
③雲の厚さ
一般的に、雲が厚いと抵抗帯または支持帯として機能しやすいと考えられています。雲が厚いとローソク足が雲の内部に留まる時間が長くなる傾向があり、薄い雲と比較して抜けにくいのです。
薄い雲ほど抜けやすく、厚い雲だと価格が跳ね返されたり、雲内部で留まりやすいと言われています。
4.一目均衡表のシグナル遅れに対処する方法
一目均衡表の三役好転や三役逆転のシグナルがでたとき、売買のタイミングとしてはすでに遅れることが多々あります。
この章では、MACDやRSIを併用して、三役好転や三役逆転より速く売買タイミングを推し量る方法をご紹介します。
一目均衡表とMACDを組み合わせてトレンド転換を見つける
MACDのシグナルが出たところと一目均衡表のシグナルが1〜2つ出たところで売買する戦略を立てます。
全体の流れは一目均衡表の基準線の傾きやトレンドの特徴から外れていないかどうかを見比べて、掴んでおきます。
MACDのデッドクロスを確認し、その数本後に転換線が基準線を下抜けます。
その直後に、遅行スパンがローソク足を下抜けたところでエントリーの判断ができます。
この時、MACDはネガティブダイバージェンスを起こしています。またその後、ローソク足が雲を下抜けたことで、エントリーに信憑性が出ています。
利益確定ポイントは、MACDが上向きになり、遅行スパンがローソク足を上抜いた時点。もしくは、転換線が基準線を上向きにクロスしたところで行うことができます。
一目均衡表とRSIを組み合わせてレンジ相場で逆張りする
まず一目均衡表を使って、レンジ相場であることを確認します。
レンジ相場では、雲のねじれが頻繁に発生し基準線が水平で推移します。上位の足で、直近高値と安値を把握しておくこともポイントです。
次に、RSIを使います。
【補足】
RSIは、70%以上で買われすぎ、30%以下で売られすぎとする、相場の過熱感を表すテクニカル指標です。(RSIは80%以上で買われすぎ、20%以下で売られ過ぎとされる場合もあります。)
レンジ相場中に、RSIが70%以上になり、折り返しそうな時点で売りエントリー、RSIが30%以下で折り返しそうなところで買いエントリーします。
エグジットは、RSIが反対売買の数値に達したら利益確定または損切りとします。
もし、ポジション保有中に一目均衡表のトレンドシグナルが出始めたら注意しましょう。
含み損を抱えた状態で、レンジ相場が終わり上昇トレンドや下降トレンドになると含み損が大きくなってしまいます。その場合はロスカットも視野に入れてポジションをどうするか考えましょう。
補足:3つの基本理論詳細
一目均衡表の根幹にある3つの基本理論を理解すると、一目均衡表についてより理解できるようになります。
波動論
相場は波を描くように上下を繰り返しながら進みます。一目均衡表では、そういった価格の上下パターンを波動論にまとめました。
3つの基本パターン(I、V、N波動)と派生したもう2つのパターン(Y波動、P波動)で成り立つことを示しています。中でも最も基本とされるのがN波動です。派生したY波動、P波動の性質の違いを押さえて、見つけられるようになっておきましょう。
水準論(値幅観測論)
ここではさわりだけ述べておくと、波動パターンから値幅目安(均衡点)を計算する分析理論です。一目均衡表では、波動パターンから目標値を予測しようとしています。
計算値は、E計算値、N計算値、NT計算値とV計算値があります。個人的には、計算値はあくまで目安なので計算できるに越したことはないという程度に捉えています。興味がある方は下図を参考にしてみてください。
時間論
一目均衡表は時間に重きが置かれています。時間論は、水準論から計算した価格の目安はどのくらいの期間で達成するのか、相場に変化が起こりやすい「変化日」を予測しようとする考え方です。
基本数値は「9、17、26、33、42、65、76」です。過去の膨大なデータから節目になる期間を割り出したものです。日足ベースでは、トレンド転換の節目になる「変化日」、もしくは強いトレンドの「加速日」として考えられています。
基本数値のほかに、覚えておきたいのが対等数値という言葉で、過去の変化日と変化日に要した日数をふまえて次の変化日の目途になっています。対等数値が基本数値になっていることが多く、日柄分析の時に活躍します。
5.まとめと注意点
一目均衡表使った基本的な売買方法が使えるようになれば、FX取引の実践上でも強力な武器となるはずです。基本的な内容を理解したら、まずは5つの補助線を活用して売買シグナルを探すところから始めていきましょう。
水準論と時間論から日柄分析をするところなど、突き詰めていくと非常に奥の深いテクニカル指標です。ぜひ、この記事に書いてあるところで利用できそうな部分はトレードに積極的に活用してみてくださいね。
サイ
東京大学大学院卒、NTAA認定テクニカルアナリスト /株式・為替トレーダー歴7年。ファンダメンタルズとテクニカルを組み合わせた分析手法の解説が得意。ラジオ日経「THE スマートトレーダー+」の出演など